感情を持つ動物はたくさん存在しますが、感情をツールとして利用するのは人間だけです。
さっき来た新聞の勧誘がしつこかった。というより気持悪かった。勧誘員がこちらの苗字をひたすら言うのです。
――○○さんあのね、○○さん今契約するとね、○○さんそれからね……。
発言の頭には全て私の苗字。あまりに執拗に繰り返すものだから、やがて意味は飽和して、これが自分の苗字なのかどうか自身が持てなくなるほどでした。
相手の名を呼ぶことで親近感が生まれるという話を聞いたことがあります。勧誘時のマニュアルに記載されているのかもしれませんね。
新聞の勧誘員をはじめ、押し売りや押し買いなど、セールスに来る人はあの手この手で営業をかけてきます。人間相手の商売です。心理学を応用し、感情をコントロールすることは効果的でしょう。
以下では、そういったやりとりでよく使われるテクニックを紹介します。
相手の手の内を知っておくことで、ついうっかり客になってしまうことを防げるのではないでしょうか。
初めに好条件を提示し、承諾されたらその条件を反故にするやり方です。
5,000 円を今貸してくれたら倍にして返すよ。そう言われて貸してしまったあなたは、ごめんやっぱり倍にするのはなしでと言われるが、じゃあ 5,000 円も返してよとは言わなかった。しかしもし最初から 5,000 円を貸してくれとだけ言われていたら、貸さなかったかもしれない。
最初から好条件を出さずに要請した場合よりも承諾率が高くなることが証明されています。
ローボールは低めの球。低めは取りやすいというところから命名されています。
初めに簡単な条件で承認してもらい、その後により大きな条件を提示するやり方です。本来の目的が大きいことがポイントです。
1,000 円貸してくれと言われて承諾したあなたは、やっぱり 5,000 円でお願いと変更され、渋々承諾してしまう……。しかしもし最初から要求が 5,000 円だったら貸さなかったかもしれない。
徐々にハードルを上げてゆくと、いきなり本来の要求をぶつけるよりも承諾率が高くなることが証明されています。
初めに難易度の高い条件を提示し、拒否されたところで、より簡単な条件で承諾してもらうやり方です。本来の目的が小さいことがポイントです。
10,000 円貸してくれという要求を断ったあなたは、じゃあ 5,000 円でいいからお願いと言われ、まあそれくらいならと貸してしまう……。しかしもし最初から要求が 5,000 円だったら貸さなかったかもしれない。
徐々にハードルを下げてゆくと、いきなり本来の要求をぶつけるよりも承諾率が高くなることが証明されています。
以上、何かを要請する時に使われる 3 つの心理学的テクニックでした。
ローボールはかなり問題がありそうですが、他の 2 つは日常的にかなり使われているのではないかと思います。ああこの人は、こうやって私をコントロールしようとしているのだなと認識することで、冷静な判断がくだせるようになるのではないでしょうか。