こんなに凄い雨はいつ以来でしょう? 東京でも、23 区内の一部地域で、「土砂災害警戒のため」の「避難勧告」が発令されています。私が住んでいる所も「避難注意」になっていました。河川付近や傾斜のある土地にお住まいの方は注意してください。
さて、大雨情報も気になりますが、Yahoo! の表記も気になりました。
はん濫。
これはもちろん氾濫 (はんらん) のこと。「はん濫」というふうに漢字とかなとで構成されているからでしょうか? なんだか収まりが悪いというか、とても奇妙な感じがします。
ふつうに氾濫と書けばいいのに。濫のほうがむしろ難しいじゃないか。どうしてわざわざこのような書き方をするのでしょう?
漢字とかなとを交ぜる表記方法を交ぜ書き (混ぜ書き) と言います。
その定義からすると、「交ぜ書き」自体も交ぜ書きになっているわけですが、特に断りがない場合には、本来漢字で書くべきところをかなにしている語を交ぜ書きと呼びます。
交ぜ書きは昭和 21 年に当用漢字表が定められたことがきっかけです。この時に、表外字が含まれる漢語を書くうえでの便宜上の手段として使われるようになりました。
その後、昭和 56 年の常用漢字表によって当用漢字表の制限的な性格が改定。同時に、公用文や法令での表外字の使用に関して次のように定められました。
常用漢字表にない漢字を用いた専門用語等であって、他にいいかえることばがなく、しかもかなで書くと理解することができないと認められるようなものについては、その漢字をそのまま用いてこれにふりがなをつける
冒頭の Yahoo! の防災情報もそうですが、交ぜ書きが目につくのは、まず何よりも報道機関による文章でしょう。
新聞で使われる漢字は新聞常用漢字表に依拠しています。これは、常用漢字表の 2,136 字から 7 字を削除し、表外字 5 字を加えた合計 2,134 字の使用を認めたもの。そこに含まれない漢字によって、交ぜ書きされた語が氾濫するわけです。
報道機関が具体的にどのような書式に則っているのかは分かりませんが、常用漢字表に若干の違いがあるだけで、先述の漢字使用のルールと同じなのではないでしょうか。
「他にいいかえることばがなく、しかもかなで書くと理解することができない」なら、表外字にルビを振ること。言い換え可能、かな書きで理解することも可能、または言い換えのみ可能というなら、他の語に変更すること。かな書きのみ可能なら、かなで書くこと。
そして、言い換え不可能、かな書き理解可能、しかも語の一部が表外字であるという要素が揃った時、表記方法として交ぜ書きが選ばれるということです。
調べてみて驚いたのは、氾濫の「氾」も「濫」も常用漢字だということです。
「氾」の方は、2010 年に改定された常用漢字表で追加。「濫」はもともと含まれていました。ただし、当初は「濫」は新聞上で使われず、2010 年の改定に合わせて新聞常用漢字表に追加された字です。
ということで、現在では新聞上でもそのほかでも「氾濫」と書くことが普通にできます。
以上、交ぜ書きについてのあれこれでした。
常用漢字に準拠するのなら、2010 年までは「はん濫」、新聞では「はんらん」や「氾濫 (はんらん)」と書いていたのではないでしょうか?
「はん濫」と現在でも書くのはその名残かと。また「氾らん」とならないのもこのような経緯からなのでしょうね。