くるくると回っている寿司屋で出されるエンガワには、食材が安価なこともあって、カレイが使われることがほとんどです。いやエンガワといえばヒラメだろう。カレイはないわ。そのような拘りを持つひとは少なくないかもしれません。天然物のヒラメしかありえないと。
しかしながら、国内で流通しているヒラメの 9 割は、海外で養殖されたものなのだそう。
さて、そんな輸入ヒラメに関してこんなニュースが飛び込んでまいりました。
大分県は10日、同県豊後大野市の水産物輸入会社「清川商事」が輸入した韓国産の生食用ヒラメから食中毒の原因となる寄生虫が検出され、同社に回収命令を出したと発表した。
発表によると、同社は5日、韓国の養殖業者からヒラメ2862匹(3100キロ)を輸入。福岡検疫所のサンプル検査で10日、食品衛生法の基準値を超える寄生虫「クドア・セプテンプンクタータ」がいたことが分かった。ヒラメは大分や福岡、長崎、大阪など9府県の業者に卸したが、健康被害の報告はないという。
クドア・セプテンプンクタータはヒラメの筋肉に寄生し、刺し身などで食べると嘔吐(おうと)や下痢を引き起こす可能性があるという。
業者に卸した後にサンプル検査の結果が出るという順序は、合理性を考えるとどうしようもないことなのでしょうか……。
問題の寄生虫は、クドア・セプテンプンクタータ (Kudoa septempunctata)。和名ナナホシクドア。
皆さんは、この寄生虫の話題を耳にしたことがありますか? これは、食中毒の原因になることが近年報告された顕微鏡的大きさの寄生虫です。
あら綺麗。
クドア・セプテンプンクタータは、魚の筋肉に寄生する粘液胞子虫です。ゴカイ類と魚類の間を行き来しながら生活しているといわれていますが、その生態はまだよく分かっていません。
人間には寄生しません。
が、寄生したヒラメを生食したことで嘔吐や下痢といった食中毒の症状が引き起こされたという事例が報告されています。症状は軽度で、速やかに回復します。後遺症もなし。また、必ず発生するというわけでもないようです。
クアドが原因と考えられる食中毒は、9・10 月に多発しています。
ヒラメがもっとも多く消費されるのは、その旬である冬であることから、消費量との相関関係はないといえます。
養殖ヒラメが原因となるケースがほとんどですが、天然のヒラメからも検出されています。
また、クドア・セプテンプンクタータと近縁のクアド属の粘液胞子虫がマグロから検出されています。
上記の処理を行うことで病原性を示さなくなります。
以上、養殖ヒラメから検出された寄生虫についての記事でした。
実を言うと、このニュースには伏線があるんですよね。去年の時点で日本政府は、韓国のヒラメ養殖場 28 箇所を検査命令の対象に指定しています。検査命令とは、輸入時には指定検査機関の検査を通さなくてはいけないという義務のこと。
検査結果が出るまでに数日かかるため、韓国サイドからすると、活魚の輸出は事実上困難になります。韓国政府はこの時、科学的根拠がないとして日本政府を批判しています。あちらでは生食しないからよいのでしょうけれども……。