NSA が日本の政府機関などを傍受していたというウィキリークスによる暴露を受け、「仮に事実であれば同盟国として極めて遺憾だ」と菅官房長官は会見で話しました。
出た遺憾。このような状況でよく使われる頻出するキーワード遺憾。字面的にどこか仰々しい一方で、改めて考えてみるとどうにもよく分からない遺憾……。
皆さんはこのよく分かんない遺憾に違和感ありませんか?
辞書に当たってみましょう。広辞苑には以下のように書いてあります。
い‐かん【遺憾】
思い通りにいかず心残りなこと。残念。気の毒。「―の意を表する」「―に思う」「―千万(せんばん)」
分かりやすいですね。
おそらく、「残念」という意味で使われることがもっとも多いのではないかと。菅官房長官のコメントでも「残念」の意味として使用されています。事実であれば同盟国として極めて残念だ、と。
これは、相手の行為を糾弾するわけではなく、残念だと感想を漏らす程度に留める形での使い方です。今回は、事実かどうか裏が取れていないため間違った使い方ではありませんが、この言葉は事実に対しても使う場合があるので違和感を覚えるのかもしれません。
この微妙な言葉は、相手に対してだけでなく、身内に対してもよく使われます。社員が不祥事を起こして社長が謝罪、あるいは教師が不祥事を起こして校長が謝罪する会見の席で、誠に遺憾に思いますと頭を下げる場面をご覧になったことがあるでしょう。
このケースでも「残念」の意味でしかありませんが、しかし残念だとしてしまうと、身内の行為を引き受けず、他人事のような距離感になってしまいます。謝罪される側の視点で見ると、残念ってなんだよということになる。にもかかわらず、代理・代表として頭を下げ、謝罪の弁を滔々と述べるので、なんだか奇妙な会見が生まれるわけです。
なのにどうして遺憾を使ってしまうのか。とりあえずは「残念」という分かりやすい言葉を避け、「遺憾」という仰々しくも曖昧な言葉でお茶を濁そうといった感じなのでしょうか。この作戦が上手くいかず、「残念」だという意味が相手に強く伝わってしまった場合、やはりそれは遺憾だと思うのでしょうか。
以上、会見の人気キーワード「遺憾」に違和感を覚えたので調べてみました。
ところで、この言葉はただちに会見の席を連想させますが、もっと身近に使われていることにお気づきでしょうか?
――実力をいかんなく発揮する
「いかんなく」を漢字で書くと「遺憾なく」。あの遺憾が現れました。「遺憾」を打ち消して、「申し分なく。十分に」の意味になります。
NSA はその実力を遺憾なく発揮しました。事実であれば遺憾に思います。