第 97 回全国高校野球選手権大会は 17 日、準々決勝が行われました。
関東第一 (東東京) と興南 (沖縄) の一戦は、注目のオコエ瑠偉外野手が 9 回 2 死から決勝 2 ラン。関東第一が 6 度目の出場で初の 4 強に駒を進めています。
破れた興南の 2 年生エース・比屋根雅也投手は 9 回 153 球を投げ切り、9 安打 5 失点 13 奪三振という成績でした。
ところで、比屋根投手のこの熱投は、ユニークな自己分析方法に支えられていたのだそうです。
“自己実況中継”がリラックス法だ。マウンドでは自分の投球を「今のはいい球でしたね」などと解説。監督の知人に勧められ、3回戦から取り入れると、自分を客観的に見ることができた。
この日も2―3の7回1死、オコエ瑠偉外野手(3年)との対決を前に「さあ、ここで今大会注目のオコエ選手が打席に入ります。何を投げるか」とブツブツ。見事、空振り三振を奪い「『ツーシームが決まったー!』って感じでした。あの場面が一番、楽しいところかなって思います」と大舞台を存分に楽しんだ。
いわゆる「セルフトーク」というメンタルコントロール方法です。
セルフトークとは心の中での独り言のことです。
ポジティブな考えがポジティブな結果を生み、ネガティブな考えがネガティブな結果を招く。メンタルの影響が強く現れるスポーツに限らず、毎日の暮らしの中でも普通に経験したことがありませんか?
無理やりにでもポジティブに考えれば、事がうまく運ぶ (かもしれない)。
ガブリエーレ・サルヴァトーレス監督の『僕は怖くない』という映画に好例が見つかります。イタリア版『スタンド・バイ・ミー』と評されるこの作品の主人公ミケーレ少年は、危険に立ち向かう際に、「ぼくは怖くない、怖くない」と繰り返し口にすることで自分を奮い立たせるのです。
もちろんそれは怖さの裏返しです。しかし、表立っては「怖くない」ということしておきます。この自己暗示によって、ミケーレ少年は困難を乗り越えることができるのです。
球場での独り言というと、桑田真澄元投手をただちに思い浮かべる人が多いのではないでしょうか? 現役時代、マウンド上でボールに何やら話しかけている光景は非常に印象的でした。
桑田氏は悪い気分を引きずると必ず打たれると考えていたのだとか。そうした恐怖心を克服するためにポジティブな内容の独り言をつぶやくようになったのだそうです。
ミケーレ少年も桑田氏も、ポジティブな言葉を実際に使うことで、ネガティブなセルフトークをポジティブなセルフトークへと変換しています。
比屋根投手の実況中継の場合は、ポジティブでもネガティブでもなく、オブジェクティブ (客観的) な言葉を使うことで自分をコントロールするといった感じでしょうか。
できる。大丈夫。怖くない。そういった直接的な言葉と比べてみると、「自己実況中継」はなかなかユーモアがある発想だと思いました。「今のはいい球でしたね~」「ツーシームが決まったー!」